
一枚垂木と雲水紋
各層の垂木は継ぎ目のない一枚板からつくられ「一枚垂木」と呼ばれます。その一面には雲と水の流れを表す雲水紋がびっしりと彫られ、軒を見上げると、静止した木のなかで雲が渦を巻いているように見えます。古くからこの塔の名を高からしめてきた意匠です。

写真:663highland/CC BY 2.5
成田山新勝寺の上境内、大本堂の手前に立つ三重塔。宝永6年(1709)に着工し、照範上人の発願のもと四年を費やして正徳2年(1712)に完成しました。以来三百年あまり、江戸中期の彫刻と極彩色をそのまま伝えています。

塔というと、遠くから眺めて姿の美しさを味わうものと思われがちですが、この三重塔はむしろ近づいてこそ本領を発揮する建物です。軒の裏、柱の上、扉のまわり——手の届きそうな高さまで、余白なく彫刻と彩色で埋め尽くされています。
なかでもよく知られるのが、一枚板から彫り出された「一枚垂木」と、その表面をおおう雲水紋。そして初重をぐるりとめぐる十六羅漢の彫刻です。塔の内陣には五智如来が奉安され、「五智三重塔」とも呼ばれてきました。
昭和55年(1980)に国の重要文化財に指定。平成20年(2008)の大開帳にあわせて漆塗りの彩色が修復され、いま目にする鮮やかさは、創建当時の姿にかなり近いものと考えられています。
この塔を見上げるとき、どこに目をやればよいか。三百年前の職人が力を注いだ場所を五つ挙げます。

各層の垂木は継ぎ目のない一枚板からつくられ「一枚垂木」と呼ばれます。その一面には雲と水の流れを表す雲水紋がびっしりと彫られ、軒を見上げると、静止した木のなかで雲が渦を巻いているように見えます。古くからこの塔の名を高からしめてきた意匠です。

各層の軒下には、彩色された雲水紋の海から躍り出るように金色の龍が配されています。順光の時間帯に真下から見上げると鱗の一枚ずつまで光を返し、曇天では逆に朱と群青の下地が沈んで龍の輪郭だけが浮かび上がります。

初重の四方には十六羅漢の彫刻がめぐらされています。一体ずつ姿勢も表情も違い、経巻を持つ者、獣を従える者、笑う者と、近づいて一周するあいだに飽きることがありません。江戸時代中期から後期にかけての装飾建築の到達点を示す部分です。

塔の基調をなす朱色には、水銀朱と丹朱の二種類が使い分けられています。さらに初重だけで三寸五分(約10.6センチ)四方の金箔がおよそ19,000枚。近くで見ると、赤は一色ではなく、金は面ではなく箔の継ぎ目の集まりであることがわかります。

初重の内陣には、大日如来を中心に阿閦如来・宝生如来・阿弥陀如来・不空成就如来の五智如来が奉安され、この塔は「五智三重塔」とも呼ばれます。内部は非公開のため拝観はできませんが、外から扉と組物を見上げるだけでも、内に何が納められているかを想像させる造りです。
晴天の全景から、真下から見上げた垂木の裏、金龍の一枚まで。写真をクリック(タップ)すると拡大します。
掲載写真はすべてウィキメディア・コモンズで公開されている実写です。撮影者と利用条件はページ下部にまとめています。
三重塔は境内に立つ建物のひとつで、拝観のための料金や手続きはありません。門をくぐって石段を上がれば、誰でもそのまま見上げられます。
拝観料
無料
成田山新勝寺の境内は自由に参拝でき、三重塔の見学にも料金はかかりません。
塔内の拝観
非公開
初重に五智如来が奉安されていますが、内部の見学はできません。拝観は外観のみです。
時間の目安
8:00–16:00
Google マップに掲載されている時間帯です。行事によって変わることがあります。
同じ塔でも、光の向きが変われば見え方がまったく変わります。彫刻を目当てにするなら、時間帯の選び方が効きます。
開門直後 〜 午前9時ごろ
人影がまばらで、東から差す光が朱と金箔をまっすぐ照らします。写真も参拝も、いちばん条件がよい時間帯です。
日没の1時間ほど前
斜めの光が彫刻の凹凸に濃い影を落とし、雲水紋や羅漢の立体感がもっとも際立ちます。参道の店じまいの気配もこの時間ならでは。
4月上旬 / 11月下旬〜12月上旬
春は境内と成田山公園の桜、晩秋は公園の紅葉。塔だけを見るのではなく、公園まで足をのばす価値があるのはこの二つの季節です。
正月三が日・節分会
初詣は全国有数の人出になり、境内も表参道も終日混雑します。ゆっくり塔を見上げたいなら、この時期の日中は外すのが賢明です。
駅から境内までの往復(徒歩20〜30分)は含んでいません。表参道で食事をするなら、さらに1時間ほど見ておくと安心です。
最寄り駅から徒歩圏、しかも成田空港から電車で10分前後。都心からも空港からも、思い立って行ける距離にあります。
JR成田線「成田駅」東口、または京成本線「京成成田駅」西口から、表参道を通って徒歩約10〜15分。ゆるやかな下り坂が続き、帰りは同じ道を上ることになります。道幅の広い一本道で、案内表示も出ています。
JR東京駅から総武線快速(成田空港・成田行)で成田駅まで約75分。京成上野駅からは京成本線の特急・快速特急で京成成田駅まで約70〜80分。いずれも乗り換えなしで来られます。
空港第2ビル駅から京成本線またはJR成田線で10分前後。空港からもっとも近い「本物の日本の寺院」で、乗り継ぎの空き時間に往復する人も多い場所です。
表参道の突き当たりが総門。総門をくぐって仁王門、そこから石段を上がると上境内に出ます。正面が大本堂、その手前左手が三重塔です。駅から塔の前まで、徒歩でおよそ15〜20分。
東関東自動車道「成田IC」から約10分。空港方面からも同じくらいの距離です。
寺の周辺は一方通行と細い道が多く、表参道は歩行者が多いため、少し離れた駐車場に停めて歩くほうが結果的に早く着きます。正月三が日や節分会など大きな行事の日は、広い範囲で交通規制がかかります。

境内に一般の駐車場はなく、周辺の民間・市営の駐車場を使います。参道の入口寄りに停めて歩くのが、結局いちばん早く着く方法です。
約300台。三重塔まで徒歩5分前後。周辺でもっとも規模が大きく、初めての人はここが分かりやすい。
約40台。表参道側からのアクセスがよく、徒歩3〜5分ほど。
門前駐車場、西参道黒田駐車場、参道の商店が営む駐車場など小規模なものが点在。台数は数十台規模。
大型車も停められる市の駐車場。境内までは徒歩20分ほどと離れるが、比較的落ち着いて停められる。
周辺の駐車場は「1回いくら」の料金体系が中心で、金額は駐車場ごとに異なるうえ、行事や時期によって変わります。最新の料金・営業時間は現地の表示、または各駐車場へご確認ください。 正月三が日や節分会の日は、早い時間から満車になり広範囲で交通規制もかかるため、電車での参拝を強くおすすめします。
成田山の参拝は、表参道の食べ歩きとセットで完成します。うなぎ、栗羊羹、鉄砲漬け——どれも門前町とともに育ってきた味です。
成田といえば、まずこれ
印旛沼のうなぎを供してきた土地柄で、表参道には老舗のうなぎ屋が軒を連ねます。明治43年(1910)創業の川豊本店をはじめ、店先でさばき、焼く様子をそのまま見せる店が多いのが成田流。昼どきは行列ができるので、参拝を先にして早めか遅めの時間に回すのが賢い作戦です。
日本で最初につくられた栗羊羹
明治32年(1899)創業の「なごみの米屋」が、新勝寺の精進料理に着想を得て日本で初めて栗羊羹をつくったと伝えられます。地元産の栗を練り込んだ羊羹は、成田土産の定番。表参道と駅前に店があります。
成田の漬物
白瓜の中身をくりぬき、青唐辛子を紫蘇で巻いて詰め、醤油やみりんで漬け込んだもの。切り口が鉄砲の筒に似ていることからこの名がついたといわれます。ご飯にも酒にも合う、日持ちのする土産です。
歩きながらの参道グルメ
参道の茶屋では甘酒やみたらし団子、焼きたての煎餅が味わえます。うなぎまではお腹に入らないという人でも、この手の食べ歩きなら気軽に楽しめます。
門前町の酒蔵
成田には門前町とともに歩んできた酒蔵があり、参道の酒販店では地酒が並びます。うなぎに合わせる一本を選ぶのも参拝の楽しみのひとつ。


三重塔を見たら、そのまま数分の距離に重要文化財の御堂が並びます。境内を出れば門前町と庭園。半日あれば、ひととおり歩けます。

昭和43年(1968)建立
三重塔のすぐ隣に建つ、成田山の中心の御堂。不動明王を本尊とし、一日に数回、御護摩祈祷がおこなわれます。時間が合えば堂内で祈りの場に立ち会えます。
写真:Tak1701d/CC BY-SA 3.0

天保元年(1830)再建・国指定重要文化財
上境内へ上がる石段の下に構える門。中央に大提灯が下がり、左右に金剛力士像が立ちます。三重塔へ向かう人は必ずここをくぐります。
写真:Zairon/CC BY-SA 4.0

安政5年(1858)建立・国指定重要文化財
大本堂が建つ前の本堂で、昭和39年(1964)に現在地へ移されました。五百羅漢と二十四孝の彫刻がめぐらされ、江戸時代後期の装飾がよく残っています。三重塔の彫刻と見比べると時代の違いが分かります。
写真:Tak1701d/CC BY-SA 3.0

元禄14年(1701)建立・国指定重要文化財
境内に現存する御堂のうち、もっとも古い建物。三重塔より11年早く建てられており、江戸中期の落ち着いた姿を伝えます。
写真:Øyvind Holmstad/CC BY-SA 4.0

昭和59年(1984)建立
境内のいちばん奥に立つ高さ約58メートルの大塔。三重塔とは時代も規模もまったく違い、二つの塔を見比べられるのが成田山の面白さです。
写真:Joel Bradshaw/パブリックドメイン

約16万5千平方メートル
大本堂の裏手に広がる広大な庭園。池と滝、梅林、書道美術館があり、晩秋の紅葉がとりわけ見事です。境内の喧噪から数分歩くだけで、まったく違う静けさに入れます。
写真:Mr Montarou/CC BY 3.0

成田駅から総門まで約800メートル
うなぎ屋、羊羹屋、漬物屋、旅館が続く門前町。明治・大正期の建物がそのまま使われている店も多く、参拝とセットで歩く価値があります。
写真:いぬっころ/CC BY-SA 2.0
はじめて訪れる方から実際によく聞かれることをまとめました。
塔内は非公開で、拝観は外観のみとなります。初重の内陣には五智如来が奉安されていますが、通常は扉が閉じられており、内部を見学することはできません。そのぶん、軒下の一枚垂木や十六羅漢は外からじっくり眺められます。
かかりません。成田山新勝寺の境内は自由に参拝でき、三重塔も無料で見学できます。御護摩・御守・御朱印などの授与、および成田山霊光館・成田山書道美術館の入館は別途となります。
総門・仁王門をくぐって石段を上がった「上境内」にあります。石段を上りきると正面が大本堂、その手前の左手(西側)に朱色の塔が立っています。駅から歩いてくると、必ず大本堂の前を通るので迷うことはありません。
境内での撮影は、一般的な参拝の範囲であれば可能です。ただし堂内や御護摩の最中など撮影を控える場所・時間があり、三脚の使用やドローンの飛行も認められていません。現地の掲示と職員の案内に従ってください。
三重塔を見上げて一周するだけなら10〜15分。大本堂とあわせて30〜45分、釈迦堂・光明堂・額堂など境内の重要文化財を一巡りすると60〜90分が目安です。成田山公園まで歩くなら2〜3時間みておくと余裕があります。
平日の午前中、とくに開門直後がもっとも静かです。土日祝の日中、正月三が日、節分会の当日は境内・表参道とも大変混雑します。行事の日程は公式サイトの年中行事でご確認ください。
上境内へは石段を上がるのが本来の経路ですが、石段を迂回するスロープの経路も設けられています。境内は起伏があるため、最新のバリアフリー経路や介助の可否については、事前に成田山新勝寺へお問い合わせいただくのが確実です。
立ち寄れます。空港第2ビル駅から成田駅・京成成田駅までは電車で10分前後、駅から表参道を歩いて10〜15分です。往復の移動と参拝を含めて、荷物を預けたうえで2時間半〜3時間ほどみておくと安心です。
屋根が三層の三重塔です。境内にはもうひとつ、昭和59年(1984)建立の「平和大塔」という大きな塔があり、写真ではこちらと混同されることがあります。重要文化財の三重塔は大本堂の手前、平和大塔は境内のいちばん奥にあります。
成田山新勝寺では御朱印が授与されています。受付の場所と時間は行事によって変わることがあるため、当日は境内の案内表示、または公式サイトでご確認ください。